Effortless Life
Bz Trip (2017)

出張日記:最後のアルティジャナートは、オールハンドメイドグッドイヤー製法を守り続ける若き靴職人

ナポリの職人を訪ねる旅も佳境に入ってきました。最後に訪れたのは、オールハンドメイドのメンズシューズメーカー パオロ スカーフォラ Paolo Scafola です。ナポリ中心地から、車で20分ほどの工業地帯にあります。

まず入ってみて驚いたのが、若い職人さんが多いということ。職人の世界は徒弟制で、頑固なおじいちゃんがトンテンカンと商品を作っているイメージがありました。が、ここは若い42歳の経営者 パオロさんが、しっかりと場所を取り仕切っていました。会社内で技術を教える時間も設けて、職人同士でも教えあうそうです。

会社の歴史を伺いました。祖父がナポリの靴工場で働いていて、その後、靴工場をスタート。パオロさんのお父さんが後を継ぎ。靴底工場も運営、既存の靴工場もそのまま残り、叔父が染めの工場等も経営。1970年代の初めに、工場をひとつにまとめて経営するスタイルに変更したとのこと1970年代は一日1000足生産していて、ブラック製法のみ。
1980年代はアメリカ、日本市場の取引が結構あり、フラッテリ・スカフォラという名前で売っていたとのこと。その後、アメリカの経済不況のあおりを受けて、会社経営が傾きだしてしまいます。会社の方針を変えるところまで、経済のあおりを受けてしまった会社は、今まで方針を大きく変えます。大量生産方式 → オールハンドのグッドイヤー製法、ブランドもパオロ・スカフォラに変更します。

なぜ、そのような方針変更を決めたのでしょうか?旧来の大量生産方式だと、値段の勝負になってしまいモノ自体のクオリティや、製法等の比較にならなくなってしまいます。自分たちの強みは、手作業、ハンドメイドということ。それを改めて再確認し、ハンドメイド製のプライスを自信を持ってつけていくことにしました。つまり、値段で比較されるのではなく、商品のクオリティで比較されることにすることを選んだのです。その方針変更により、会社の経営は安定していき今でもオールハンドメイドの技術は日々高め合っているとのこと。

商品や情報が氾濫している現在、安ければなんでも良い、コストパフォーマンス重視という価値観もアリだと私は思います。ものづくり側にいる立場になると…値段の勝負は規模や商圏の大きさがある会社には到底かないません。せっかくの技術がある会社は、何よりもクオリティにこだわりをもつこと。そのための努力は惜しまず、時間とお金を投資したことが、価値となり、ものに現れていくのだなと思います。 パオロさんは、ハンドメイドがインダストリアルよりも、いつも絶対的に良い!とは思わないとのこと。規格品のように100個全て同じではないし、一点に対するブレも必ずあります。が、それを「良い」と捉える人が使ってくれれば何よりだそうです。そうですよね!

二ヶ月に一度、ニューヨークのお客さまのところへ行く生活が続いているそう。世界中に大体300人ほど顧客がいて、日本にもお客様がいるそうです。日本のお客様はナポリの工場に直接来て、採寸するとのこと。お客さまとの出会い、コミュニケーションは何よりも楽しいようです。大体一人二足くらいのオーダーをし、生産は仮縫い期間含めて4-6か月位で、お値段はEur2000-2500 程。

なぜナポリで職人が育ち、残っているのか?という質問をしてみました。ナポリという場所はヨーロッパの貴族、侯爵のための保養地だった。彼らはお金の苦労がないため、日々を優雅に、そして怠惰に過ごしていた。そんな彼らの楽しみの一つが、スーツや靴を腕の良い職人に作らせること。時間とお金があるので、一日中職人の工房でフィッティングをしたりして過ごす人もいたそうです。出来上がった製品を他の人に薦めることで、評判がどんどんと広がっていき….。ナポリを訪れた貴族階級が、職人のパトロンとなったことがとても大きかったようです。フィレンツェではメディチ家が、芸術家のパトロンとなったことでルネサンスが花開いたことを思うと、イタリアの文化発展にはパトロンの存在は欠かせないんですね。

若き経営者、パオロスカーフォラのシューズ。日本では店頭展開はしていませんが…ハンドメイドの技術がつまった逸品。現地ナポリを訪れた際には、オーダーの旅の寄り道の一つにオススメです。

Paolo Scafola 42歳
Website ; http://www.paoloscaforanapoli.it/

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